Tadasu Oyama

"追悼記 2019年12月16日逝去 大山 正先生を偲んで"
           市川 伸一 (東京大学名誉教授)

   

『心理学研究』第91巻 第3号 2020年 

 故大山 正先生は、1928年(昭和3年)1月21日、東京にお生まれになりました。東京大学文学部を1951年にご卒業後、1961年に文学博士号を取得され、1963年から1964年にかけて、フルブライト研究員としてコロンビア大学に留学なさっています。
 1956年には、北海道大学文学部講師、さらに1962年から助教授としてお勤めになりました。アメリカへの留学から帰国されてまもなく、1965年からは千葉大学文理学部助教授、さらに1968年から教授としてお勤めになりました。1980年からは、東京大学文学部教授として1988年までお勤めになりました。さらに、日本大学文理学部教授として1998年までお勤めになり、この間、1995年から1998年まで学部長の要職に就かれています。その後も、日本大学大学院非常勤講師として2008年までの10年間、大学院生の指導にあたって来られました。
 大山先生は、我が国を代表する心理学者として、視知覚を中心に、実験心理学、心理学研究法、心理学史などにわたって幅広く研究され、学術論文は140編以上、ご著書は60冊以上という膨大な業績があります。学術論文は70編以上を英語で書かれており、またその多くが海外の主要雑誌に掲載され、国際的に活躍されてきました。その多大な貢献から、2007年9月には、「日本心理学会国際賞特別賞」を受賞されています。
 学会においても、多くの要職をお務めになりました。日本心理学会の常務理事を合計12年間、編集委員長を6年間、また、日本学術会議の会員を6年間お務めになっています。日本心理学会、日本色彩学会、日本アニメーション学会では、名誉会員になられています。

 私が大山先生とはじめてお会いしたのは、「知覚コロキウム」という研究会の席で、私はまだ大学院に入りたてのころでした。世界の最先端で研究を進めている大山先生が、タ食後の会席の場で、若い学生たちと気さくにお話をされていたのを鮮明に覚えています。
 その後、1980年に東京大学教授としてご着任になり、ゼミや私の個人的な研究について、ご指導を受ける機会に恵まれました。私が大山先生から学びえたことは、何と言っても、研究者としての姿勢、生き方でした。専門的な見識の深さは言うまでもありませんが、領域が異なるので知らないことやわからないことは、相手が学生であっても、何でも聞いてきます。また、それに対してアドバイスをくださったり、ご自分の研究にも何らかの形で生かせないかを考えたりされる姿勢が強く心に残りました。。
 ゼミのあとは、そのまま近くのレストランに行き、昼食をともにしながら、楽しくお話をさせていただきました。コンパにお誘いすると必ず出て来てくださり、2次会のカラオケにご一緒したこともありました。私も、いずれ大学の研究者になったときには、このように学生たちと距離の近い研究室をつくりたいと思ったものです。
 大山先生は、後進となる若手研究者の成長を常に考えてくださっていました。学術雑誌の特集号や編著書で執筆の機会を与えてくださり、海外の雑誌に積極的に投稿することを促し、その指導も懇切丁寧に行ってくださいました。学会の懇親会の場では、いつも著名な先生方と引き合わせてくださいました。
 このようなご配慮とお人柄のもと、大山先生の周りには、晩年に至るまで、多くの若手·中堅の研究者が集っていました。私も何回か、家族ともども、新年のご挨拶にうかがい、奥様にも厚いおもてなしを受けました。グランドピアノの上に乗っかってしまった娘たちは、3人とも30歳を越えていますが、先生にお世話になったことをよく覚えています
 また最近は、日本大学の卒業生の方々が企画してくださる新年会に、私もしばしば同席させていただいておりますので、奥様とごいっしょにお元気な姿を見せてくださることを楽しみにしておりました。その大山先生が2019年12月16日に逝去されたことは、今でも信じられない思いです。
 これからも、私たちは大山先生の研究への情熱とご意思を継いで、心理学の発展と社会的貢献のために尽くしてまいりたい所存です。どうか、いつまでも暖かくお見守りください。

学会役職·受賞等
1994 - 2000 日本学術会議会員
1983 - 1989. 1992 - 1998 日本心理学会常務理事
1992 - 1998 同編集委員長
2003 -    日本心理学会·日本色彩学会·日本アニメーション学会名誉会員
2007年 9月   日本心理学会国際賞特別賞受賞
2009年 5月   日本色彩学会賞受賞
2017年 3月   第50回知覚コロキウム(慶應義塾大学日吉キャンパス)にて記念講演

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『心理学研究』の追悼文の原文には、このあと大山先生の主要な著書と論文のリストが約4ページにわたり掲載されています。これは、学術雑誌の追悼文としては異例のことですが、大山先生ご自身にとっても、指導を受けた私たちにとっても、最も誇りとしていたのはその膨大で質の高い研究業績であり、後に続く心理学徒にも大いに刺激にしていただきたいと思ったために掲載させていただきました。ただし、そのリストの内容は、本サイトの「業績 Works」の中に含まれておりますので、この追悼文では省略させていただきます。(市川)